雑観練習帳

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「容疑者Xの献身」

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)


 頭は冴えてるが、風采が上がらず、故にもてない、高校教師の数学者の恋と、同級生で大学准教授を務める物理学者の人間関係を軸に進んでいく推理小説
 日本では映画化されてヒットしているというのだが、この登場人物、中年(40代だろう)の域に達していながら、みんな独身かバツイチ子持ちで、全く華やかさがない…。私の周りは公私にわたってこういう人ばかりで、何のとまどいもないのだけれど、だからこそ、それだけに、「よく描けているなあ」と思うことしきり。
 この作品がヒットしているということは、日本人はみんなこんなに恋に、人生に満たされていないということなのか。はたまた他人の不幸を嗤って読んでいるのだろうか。ちなみにこの本、仲むつまじい既婚者から譲り受けたものですが(面白かったので感謝)。
 まだ髪の毛は残ってはいるけれど、愛や恋や出会いやらにさっぱり恵まれない、そして恵まれようもない地に住んでいる私としては、この数学教師が女性に寄せる仄かな、しかし激しい(殺人事件に関わるほどの)”恋心”が、実によく描けているなぁ、と感心してしまう私です。「ウソっぽい」と思う人は、「本当の恋を知らない」のだ、とこの場であえて言い切りたい。
 ついでに言えば、謎解きのどんでん返しはあるのだけれど、筋書き的には探偵役の物理学者の「旧友の直感」で結末へと誘導しすぎているような気がして、「このミステリーがすごい!」とまでは思えませんでした。でも「もてない男」の感情描写がすばらしいので許してしまう。
 しかし、本当にこの筋書きで映画化したら、まったく救いがないように思えるけれど、いいのかな?