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雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

南オセチア=台湾?(グルジア情勢)

政治・経済・国際

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 さる方から紹介を受けた専門家によるグルジア情勢分析。

 こういった特異事態に際し、地域研究者が自ら「リアルタイムで」文章を著すことは極めて少ないのが現実だ。ゆえに今回の事態の背景を知りたい方には格好だと思う(文章は長くないのでその点でもお勧めしたい)。
 本稿で特に注目すべき見解は、宇山智彦氏の文章中の、「欧米諸国や日本の政府は、グルジアの『領土保全』を常に重要事項として掲げるが、これがグルジア側の武力行使を正当化するものではないという留保をつけない限り、同じ論理で中国が台湾に侵攻できるのだということを忘れてはならない」という分析だ。
 たしかにグルジア側の主張のように、中国の「領土的一体性」の主張を尊重していくならば、その論理は中国による台湾への武力侵攻を正当化することに直結する。特にカフカスコーカサス)のような歴史的状況が入り組んだ場所で、現状を「武力で変更する」ことがいかに危険な行為であるか。
 どうしても冷戦時代から国家を「敵味方」や「善悪」の基準で二分しがちだが、今回の南オセチア情勢が深刻化したのは、欧米によるコソボ独立容認が直接的な引き金だったとの指摘も根強い。いまや国家の行為の「正当性」の議論を、地域限定で行うことはできないのだ。
 グルジア情勢は小生の予測が当たり、ロシアはいったんグルジア本土への侵攻を停止した。しかし、グルジア(というよりサーカシビリ政権)は領土の一体性の主張を取り下げるどころかますます固執する傾向をみせているから、米国やEUがコミットすればするほど(「後ろ盾」が強まれば強まるほど)、グルジアは再び拳を振り上げ、かえって再侵攻の可能性が増す可能性すらある。しかし、万が一それが実行されるなら、ロシアは今度は本土侵攻をためらわないだろう。グルジアとロシアは停戦に合意したものの、戻すべき「原状」の認識が、両者間で完全に食い違った状況だからだ。
 しかし次なる戦闘が起こればおそらく破滅的な結果をもたらすことだけは間違いない。今回のフランス主体の調停が「最後のチャンス」という状況に変わりはなく、危機はまったく去っていない。