読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

「小泉政権」(内山融著)

書評・映画・音楽

 

小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)

小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか (中公新書)


 飛行機に乗る前日に購入したまま、ほったらかしになっていた中公新書。きちんとした(分析ツールや枠組みの使い方という点で)政治学者が小泉政権を分析したらどう見えるのか、ということに前から興味を抱いていたのが購入の動機。
 1,2,3章は事実上の経過説明だから、同時代人は必ずしも読まなくても良いかもしれない。少し小泉政権への肯定的な評価が気にかかるなと思った。しかし筆者の政治学的な分析になる4章、5章はかなり公平に分析されていたと感じた。
 という感想を持つのはもちろん、小生の小泉政権への私見、感想に近いからなのだが…。4章、5章は社会科学をやっていない人だとちょっと難解に感じるかもしれないが、最初の3章は読まなくても良いから、後ろの分析部こそきちんと読まれるべき本だと思う。
 ごくごく簡単にまとめれば、小泉政権ポピュリズム手法に基づく「排除」の政治であった。また小泉政権は「サッチャリズム」であり、いわゆる新自由主義に依拠する政権であった。
 筆者の主張では今後それに対抗するものが現れる。それは例えば激しい左右対立を招いた岸信介の後に首相に就任した池田勇人が掲げた「所得倍増」のような、「排除」のアンチテーゼとしての「包摂」の観念が軸になるだろう、という。
 政治思想では、新自由主義への対抗軸としてあり得るものとして、パットナムの「ソーシャル・キャピタル(人間関係資本)」の概念を挙げる。筆者自身の言を借りれば、「市民が担う自発的な『公』の活動が、政策の有効性や住民の厚生に大きく影響する」からだ。谷垣禎一氏の「絆」論がそれに近いとも言及されているが、谷垣氏自身が総理になってそれを実現できるかといえば、現在の政治状況ではかなり難しいんじゃないかとも思う。
 小生の感覚からすれば、これだけ成熟した社会と完成された政治制度を持ちながら、いまさら外的要因によって規定された(筆者自身が本書でそのことに言及している)「55年体制」的な疑似政権交代でもあるまいという気もする。実は本書を読んで一番感慨深かったのは、非自民の細川政権がもう15年も前のことだということ。この15年、日本の政治はいったい何をやっていたんだということになるのだけれども。