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雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

「自民党をぶっ壊す」

政治・経済・国際

 といった人によって自民党は延命に成功したが、結局ぶっ壊れてしまった、ってことなんではないだろうか。

 ごく簡単に言えば「保守で、長年政権を担当してきた政党が"改革"を主張することは、自らの過去を否定することになって、自己矛盾に陥る」(これは政治学ではなくて、論理学上も明らかだ)ってことなんだろう。前任者と違って、安倍晋三首相はまじめで優秀な政治家だから、その矛盾に耐えられなくなったのではないだろうか。
 今回は直接的にはスキャンダルが原因だったのだけれど、2世、3世の若手大臣の体たらくをみると、自民党は政治学で言う"政治的補充"に完全に失敗しているように見える(解決策は、どうにか”補充”した「小泉チルドレン」を大臣にすることくらいしかないが、彼らの未熟さを考えれば、やや手遅れにも思える)ので、遅かれ早かれ(ここで言っているのは10年間スパンくらいの話)、自民党は自己崩壊するのではないかと危惧していた。

 どこにでも書かれていることではあるが、決して高くない投票率の中、公明党(支持率は総人口の約10%くらいの地域が多いが、全員投票に行くので投票総数の20%近くの影響力を持つ)の助力も得て、あの惨憺たる結果になったというのは、80年代末の自民党の敗北よりはるかに深刻な状況と考えて差し支えないと思う。
 政治学的に見て、80年代の自民党政権の危機は、穏健な中道政党を取り込むことで政権基盤の維持に成功したが、今回は中道政党はもうあらかた取り込んでしまっていて、連立に加えるべき相手はもはや見あたらない。むろん政界再編になれば別だ。個人的には、巷で騒がれている民主党政権の誕生と言うよりは、むしろそうなる可能性が高いと思っている。
 その場合の政策軸も既に見えているように思う。高齢化社会への対応である。小泉=竹中的新自由主義が一つ。もう一つは、以前にも書いているが、消費税、法人税を上げる代わり社会保障を充実させる(もちろん、英ブレア=独シュレーダー的な装飾は施すのだろうけれど)という軸しかないだろう。移民政策もこれに含まれる(これはそれなりに大きなイシューだろうが、私は上京して一番衝撃を受けたこと=東京のコンビニにもはや日本人店員がほとんどいないという衝撃的な状況=を見れば、選択肢はあまりなさそうだ。というか既に事実上なし崩しになっている)。

 一方で、対外政策や憲法問題が政策上の対立軸になることは、ほぼあり得ない。
 日本はもともと対外政策が国政の争点となる可能性の極めて低い国家だし、近い将来に想定し得る「周辺事態」=朝鮮半島有事や台湾有事=について言えば、どの政党であれ、政策上の選択肢はほとんど無いからである。
 「日本改造計画」を著した小沢一郎党首と安倍晋三首相の「美しい国」の対外政策がどう違うか、なんて議論もたぶん意味がない。米英と違って、「テロとの戦い」を意識して日本で生活している人が、まずいない(政権選択に影響する勢力にはならない)からである。これは日本人の意識が低いからではない。日本の立地が地政学上、世界の中でかなり恵まれていることの当然の帰結だと思われる。

 最後にちょっとだけテクニカルなことを書くと、既に衆院の任期満了まで2年ちょうどくらいしかない。現状の参院の勢力図は相当高い確率で最低6年間続くわけで、前回総選挙が「勝ちすぎ」であったことを考慮すると、残り4年は衆院での法案再議決も困難な状況(与党で3分の2を下回る)に陥る可能性は極めて高い。
 連立の枠組みを変えるか、政界再編をしない限り、どんなに少なくとも4年間、2回の衆院総選挙を参院での与野党逆転状況の中で戦う必要があるが、これは常識的に考えて至難である。