雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

いかがなものか、記事盗用?

 SNSの某コミュニティより(ほぼ原文ママ)転載。(小生ドイツ語できないし、事実と違うと困るので、記事の社名は伏せました。あくまで”議論を紹介”したに過ぎません)
=ここから引用=
 下の記事は、東西ドイツ間のわだかまりをなお残す状況を、やはりワールドカップを舞台にとらえた、上と好一対をなすもののように、一見思えます。

◎旧東独の国旗に賛否両論=W杯盛り上がる中お目見え

 サッカーのワールドカップ(W杯)を開催しているドイツでは、同国代表が勝ち進み、国民の間で大きな盛り上がりを見せている。アパートの窓や車など街中のいたるところでドイツ国旗が見受けられるが、その中に旧東独の国旗がお目見えし、賛否両論を呼んでいる。
 旧東独国旗は、黒赤金の3色のドイツ国旗の中央にハンマーなどが描かれていた。ベルリンの観光地にある土産物店などで売られているが、旧東独の住民にとっては、当時の苦しい経験を思い起こさせることなどから、それらを掲げたりすることは通常考えられないことだった。
 だが、W杯でドイツ代表が勝ち進む中、旧東ベルリンでアパートの窓から旗を掲げる人々が現れた。「われわれは自分たちを過去から隠す必要はない」とある女子高校生(18)。また集合住宅に暮らしている30代の男性は「ここでは旧東西の住民が一緒に暮らしているので冗談で出した」と説明した。

 一方で、そういった光景は旧東独の政権政党社会主義統一党(SED)の党大会を想起させるといった嫌悪感を抱く人もいる。旧東独時代に抑圧された人からは「秘密警察(シュタージ)の犠牲者にとっての侮辱」(57歳の男性)と強い批判の声が上がっている。
 ここまでが、ネットに掲載された記事の全文です。かなりアクセス数の高い記事になっているようです。
 特に東ベルリンや旧東ドイツにお住まいの皆さんに質問です。このWM期間中に東独国旗をどこかで見ましたか。私は一枚も見ていません。
 次に上記の記事の成立過程を説明します。

”Berliner Zeitung”(BZ)という新聞がベルリンにあります。同じ名前で旧西と旧東にあるらしく、まぎらわしいのですが、ここでとりあげるのは、旧西、あのアクセル・シュプリンガー系の新聞です。ビルト・ツァイトゥングとほぼ同じ傾向のものです。
 この新聞の6月22日付の記事を全文、原文のまま引用します。
Es sieht aus, als haetten sie fur den SED-Parteitag geflaggt. Immer mehr DDR-Fahnen mit Hammer und Zirkel wehen jetzt zur WM im Wind - vor allem im Ostteil der Stadt.

「まるでSED党大会を思わせる」という表現は、前投稿の記事の最後に出てきます。
Wie in der Rosenthaler Strasse in Mitte. Hier hat Schuelerin Michelle N. (18) eine Flagge aus ihrem Geburtsland gehisst. Warum? "Weil wir uns vor unserer Vergangenheit nicht verstecken muessen." DDR-Fahne auch in der Mainzer Strasse (Friedrichshain). "Wir wohnen in einer Ost-West-WG und haben sie zum Scherz aufgehaengt", sagen Promoter Torsten H. (34) und Fotograf Dirk E. (33).

 女子生徒(高校生)ミッシェル・N(18歳)の発言として、「私たちは過去から自らを隠す必要はない」と書かれています。つづいて34歳と33歳の男性が「東西の人間が一緒にWG(アパートのシェア)で暮らしていて、冗談で掲げた」と言っていますね。
 前の某記事では、18歳の女子高校生と「集合住宅」(WGを訳し間違えたらしい)に暮らしている30代の男性が、一字一句同じことを言っています。

 Gar nicht lustig findet das Rudolf Schroeder (57). Er sass als politischer Haeftling von 1978 bis 1980 im DDR-Knast: "Eine Verhoehnung fur uns Stasi-Opfer." Julia Kleinschmidt (76) vom Opferverband der Mitteldeutschen fordert: "Weg damit!"
 57歳のシュレーダーという東独で政治犯として収監されていた男性が、「我々シュタージの犠牲者への侮辱」と怒っています。日本語の記事では「57歳の男性」がそう言ってますね。

 Kritik auch aus der Politik. "Das ist unertraeglich. Wir sollten alle froh sein, dass die Zeit der DDR vorbei ist", sagt der CDU-Bundestagabgeordnete Kai Wegner (33). Gruenen-Spitzenkandidatin Franziska Eichstaedt-Bohlig (64) sieht das aehnlich: "Die WM ist ein gesamtdeutsches Ereignis, hat mit den Symbolen der leidigen Geschichte der DDR nichts zu tun!"

 地元政治家の発言ですが、ここは全部カットしています。

BZの記事は今のところネット上にありますので、URLを貼っておきましょう。
 http://www.bz-berlin.de/aktuell/berlin/060622/fahne.html


 つまり、この某社は、ベルリンの三流紙の何故か8日前の記事をそっくりパクって記事を書いたと断定せざるを得ません。もちろん、情報源としてテレビや新聞を使うことは当然です。問題は全く裏をとっていないこと。
 BZなんていうのは、かなり怪しげな記事を書く新聞です。この記事だって「やらせ」でないという保証はない。
 某社の記者さんは、ベルリンにいるのですから、町へ車を走らせて、旧東側の通りをしばらく検分すれば、このヨタ記事が本当かどうか確かめられたはずです。
 それから、よそのメディアの情報を引用するときは、「○×によれば」と断るのが礼儀のはず。
=引用終わり=

 まあ1人でやっているのだろうから、大変なのは分かりますが。。。それとも提携通信社・新聞社電なのかな?結論として言えば、インターネットの普及で、特派員もやりにくい時代になった、ってことなんでしょうか。
(追記:その後、関係者の処分が発表されたそうです)