雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

お子ちゃまには向かない職業

「僕は会社の犬なんです」と、放火未遂容疑で逮捕されたNHK記者が言ったとか言わないとか。
NHK批判なんか、どこのサイトでも繰り返されているのだろうから、もう語る気はないけれど。
 感想として言えば「僕も会社の犬ですよ。でもね…」ってとこか。
 みやっとさんの日記なぞ…に出てくるけれど、サラリーマンにとって、完全に「自己実現」できる可能性は基本的にかなり低いだろうと思うし。
 報ぜられる限り、なんでも最大の動機は「上司のイビリ」だそうだが、まあ、あまりにありがちすぎて、驚きもない。
 だいたい記者業の中で、まあ上司と言えばデスクかキャップなわけだが、彼らによるパワーハラスメントなんていうのは、業界内では会社を問わずもうあまりにも当然に起こっているから、何の驚きもないんです。体育会系しごきっていうのかね、上下関係すごい強いし。
 NHKで、大津くらいの「ごく普通の県」だったら、県警キャップは2−5年目の20代、デスクは40代前半くらいか。

 ただ、普通はそういったパワハラへの反作用というのは、うつ病の発病という形だったり(若手記者のうつ病発症率は極めて高い)、女性記者だったら上司との不倫でドロドロになったり(個人的には、この恋愛感情の発露はたぶん「ストックホルム症候群」で説明できると思ってる)、あるいはまだ当人に正気が残っていれば普通に離職したり、って形で現れる。
 それが、今回は犯罪という極端な行為で現れた、ってことに過ぎないような。彼を全く弁護しないけどね。犯罪に走るなんて、幼すぎる。
 というわけで、したり顔でNHK批判の記事を連日書いている各社の記者だって、大手メディアなら自分の会社で4つや5つは簡単に思い当たる節があるはず、と確信を持って言える。

 さて、振り返って自分は何の気なしに(本当に)、大学を普通に卒業してこの世界に入ったけれど、正直今でも、この業界の「文化」や「空気」というものに違和感を感じ続けています(逆に、今となってはこの世界の良さも少しは語れるつもりだけれど)。
 勤務評定の席なんかでは、小生も偉い人に「キミも窓際を脱却するには特ダネ書かないとねぇ〜」なんて言われて「はぁ〜そうですねぇ」なんて気のない返事をしているわけですわ(まあ、だからいつまでも窓際なのかもしれないんですが…)

 でも一方で、「窓際で何が悪いの」って開き直れる度胸を持てないうちは、やっぱりこの仕事で自分の信念を通して生きていくことはできないし、必ず相手(取材先)を傷つけることになってしまうだろうと、反省を込めて言います。もし、それを忘れてそのうち偉くなったとしても「本当に自分がやりたかったことって、何だっけ」とうろたえることになったりして。
 記者クラブで雑談すると、窓際だ、更迭だ、部長の椅子争いだ、なんて話はどの社内でも駆け回っているそうですけど、結局最後は、どの社だからどうとか、そんなことじゃなくて、その人が何を取材したいのか、って問題意識をいつまでも持ち続けられるかどうかなんだよね、と思うんです。これを失ってしまうと空しいだけ。

 マスコミ志望の学生が最初みんな思うように、みんなが初球をホームラン(=特ダネ?)できるわけでもないし、実はその必要もないと思うんですよね。
 地の果ての通信部発の記事で新聞協会賞を取ることだってあるし、年齢を重ねてから、野球で言えばフルカウントで打ってもいい。警察取材ができなくても、ほかの取材で頭角を現す記者もごまんといる。

 で、それが分かんない、手下の能力を把握もできないお子ちゃまのうちは、キャップだの、「あいつは特ダネ記者」だ何だと祭り上げない方がいいのじゃないか、と思う。せいぜい20代の若い衆に頼りきっている会社も会社なんですけどね。
 ま、新人で初任地に来ると、定年まで同じイヤな上司がいるような気分になっちゃうけどさ、いったんメンツが変わってしまえば、あのときの悩みは何だったの、って豹変しちゃうのも、またこの業界ってことです。

 結論としては…。〜何ともやりきれない事件だ。