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雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

某プレスが語る郵政民営化?

政治・経済・国際

 友人のmoppingさんが書いているちびてつの成長日記で、郵政民営化についてのエントリがあります。私にはmoppingさんの書き込みもさることながら、反響の書き込みが面白いのですが(独身男性には嫁姑問題や子育てのテーマはちと…)、それは実際に見ていただくことにして…

 郵政民営化について、政府案の問題点とか、細かいことや正確な記述は新聞を読んでいないので(笑)勘弁いただくとして、小泉純一郎首相の持論の郵政民営化について言えば、郵貯の出口、財政投融資の問題と密接に関連していると思われます。

 反対派の論点1。「郵政3事業は黒字だ」

 これは目の前の「郵政事業の」帳簿だけ見ればその通り。
 しかし、郵政事業者は預金保険料を払っていない(ペイオフも適用されてない)し、そもそも自己資本がなくて、自ら融資もしていません。お金を集めるだけ。黒字で当然なんです。
 融資というのは金融機関が儲けるためには絶対に必要なものなのですが、逆に、失敗すれば不良債権=破たんの憂き目に遭うわけです。
 より多く儲けるためには、より多くのリスクを取らねばならない。これが資本主義の鉄則です。
 そういうマーケットの中で、一人だけリスクを取らないで儲けている事業者がいればどうなるか。ほかの民間市場をゆがめることになるのは当然です。

 その典型が「ペイオフだから、銀行預金を下ろしてつぶれない郵貯に預けた」

という、一見賢いように見える不況時の”庶民の知恵”だったわけですが、これは結局自分の税金になって跳ね返る仕掛けとなるわけで。それを簡単に説明してみようという無謀な試みを…。

 moppingさんが書いているように、そして私もコメントしましたが、郵貯簡保は国の慈善ではない(儲ける必要はないが、損もしてはいけない)ので、集められた金は年金なんかと一緒に、いわゆる広い意味での「公的資金」となって、主に「財政投融資資金」となって投資に回されます。投資をするのは財務省理財局。

(筆者注:公的資金とそれに密接な関わりのある特殊法人の問題点は、賢い財務省も当然ある程度は認識していて、現在は直接資金を投入するのではなくて「財投債」という債券を介す仕組みに変わって、特殊法人の野放図な資金調達へのチェックは若干強化されています)

 「財政投融資」というのは、高校の政治経済の教科書に書いてあるレベルで言えば、「民間金融にできない、長期・低利・多額だが、国家国民にどうしても必要(公共性の高い)、かつ有用な施設などへの投資を行うための資金」ということになります。

 問題は、先進国日本にそんな事業や施設が今どきあるのか、ってことなんですね。

 まず、投資ですから回収しなければいけない。郵貯簡保の利子を払わなければいけないから、何十年か先に利子付きで回収できなければいけないのが前提。

 重要なのは、「みんなに役立つけど儲からない施設」は財政投融資の対象にならない、ってことです。これは税金で作らなければいけません。だって儲からないから返済できない…

 で、郵政関係者ほかの名誉のために申し上げれば、財政投融資の圧倒的な成功例というのは、やっぱり結構あるんです。
 それは昔のこと、例えば東名高速道路や、東海道新幹線だったりですね。
 これらの投資は巨額で当時の民間銀行では融資できない規模の事業でしたが、十数年で回収できましたし、みんなが便利になって、日本経済に与えた波及効果は計り知れませんでした。
 ところが、そのあと出来た上越新幹線や本四架橋はどうでしょうか。
 これも財政投融資で作ったのですが、柳の下に二匹のドジョウはいなくて、結局国鉄と本四公団なんかは、投入した財政投融資の返済もできずに、事実上の倒産、破たん処理に追い込まれました。財政投融資にも「貸し倒れ」があるんです。
 ココで重要なのは、さっき書きましたが、「郵貯には預金保険自己資本もありません」から、破たん処理をするということは、即国民の税金が投入されることになるということになります。
 「破たん」ですから、今度は利子がついて返済義務のある「公的資金」を入れることは出来ません(それをやると消費者金融借りた主婦の自転車操業みたいなことになっちゃう)。
 なので、穴埋めは真水=血税で払うことになります(確か国鉄の破たん処理のため、たばこ税が値上げされたはずです)

 ここでさっきの庶民の知恵=「お得なはずの郵貯」が、その自分の税金増になって跳ね返ってくるという仕掛けになるわけです。

 例えば最近の財投の投資先は、ODA(例えば中国への円借款とか)、あるいは道路公団による高速道路の建設、整備新幹線なんかが多いわけですが、最近できた高速道路はみんな田舎で、何年たっても建設費は返済できそうもないだろうなぁとみんな思っているし、そんな状況だから実は役立っているかどうかも分からない。中国への円借款が本当にきちんと返済される、と確信している人はほとんどいないでしょう。

 人間というのは、使えるお金が余っていると、ついつい無駄遣いをしてしまう癖があります。特に、他人が集めて、責任を取らなくて良ければ、なおさら使い方はルーズになります。

 だから、お金の使い道が少なくなったら、集める方も少なくしなければいけないのです。だから、郵貯簡保の規模は小さくしなければいけないし、民間の銀行だけでお金が貸せる事業ばかりになったのならば、過去の戦後復興や高度成長にはものすごく役立って、その功績は十二分に認めるにしても、もう財政投融資は極限まで減らして、そのための集金機関である郵貯簡保は民営化した方がいいという議論だと思っています。

 (ケインズ経済学の立場では、不況時の公共投資は有効、という立場から、その資金として財投の活用を主張する立場があります。私は雇用の弾力性とかの面ではケインジアン的な考えなんですが、それでも小渕政権の時に猛烈に公共事業を入れたけど景気は良くならなかったし、そもそも現在の財政投融資が投入されるような事業では、投資の乗数効果が満足に出ない(つまり=「みんなの役に立つ事業をやってない」)。
 景気対策という点では、本当はITベンチャーの起業とか、大もうけできるような新技術の開発とか、そういうものに公的資金の融資ができればいいのですが、民間でも貸し出しかねているような事業に、お堅い官庁が貸せるわけがない、というのは小学生でも分かる理屈)

 論点2。過疎地の郵便局はどうする。特定局は役立っている。

 これは議論として成立していません。郵便局、銀行、信金信組、農協漁協を問わず、”過疎地に立地する金融機関”に補助金を出せばよいだけのことです。「周囲何キロに金融機関、ATMがなく〜」みたいな条件を、優秀な官僚機構がきちんと決めて、補助金をばんばん出せばよいんです。その方が全国一律の巨大国家機構と公務員組織を維持するより遙かに安いです。
 郵便事業だって、過疎地に配達するヤマト運輸の宅急便にも、「過疎地配達補助金」を出せばよいんです。これは財政学の基本のきなんですが、反対する議員の人はそういうことに反論したり、提案したりしないんですかね。
 災害の時の対処うんぬんという議論がありますが、大災害の時には、郵便を届けるより「もっと大事なことがある」んです。限られたお金と人員なのだから、そっちに使いましょうよ。

 あと細かい論点は多いのですが、あくまでテレビを見るときの足しにという程度の走り書きとしてご理解いただければ幸いです。だって、数字に弱い私の専門は政治学ですから。