雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

銀山温泉

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 山形県尾花沢市銀山温泉に行った。
 古くからの湯治場の風情を残す温泉街である。車が入れないことが、情緒を残している一因なのだろうか。
 我々一行はうち一軒の「能登屋旅館」に宿泊。古い建物故、風呂は大きくないが、雰囲気を残しつつ内部は近代的に改装されており、快適に過ごせた。
 「温泉の権威」、札幌国際大の松田忠徳教授ではないが、温泉を求める観光客の欲望に、まず旅行代理店が応えようとし、代理店の要望に旅館側が応えようとするその過程で、古くからの湯治場の多くが、無惨なまでに破壊され、鉄筋コンクリートの無味乾燥な建物に置き換えられた。
 いまや終身雇用が過去のものとなり、社員旅行などという言葉が過去帳に消えようとしている。そんな中で、団体旅行にしか対応できないそういった「箱モノ」が、各地の有名温泉地で半ば廃墟と化した姿をさらしている。
 そういった有名温泉地を再生しようとする動きもある。それは、サービスの価格を需要の出る価格まで安くするという方法だ。徹底したコストダウン。1泊3000円台でバイキングの食事が付くようなパックが相次いで出されている。

 一方で、今どきの個人客を呼び込みに成功する宿はどうか。熊本の黒川温泉を筆頭に、銀山温泉もそうだが、敢えて古いモノを残し、温泉街の家並みも景観保存条例や旅館組合の申し合わせで保存する。料理は土地のものを出す。本物にこだわりたがっている、一種の「ブランド志向」が温泉にまで浸透し、こういった温泉地は盛況だ。
 いわば二極化しているのだが、ここで問題提起を一つ。日本人は休まない。ということが、こういった観光産業の経営に大きな課題となってのしかかる。日本人のサラリーマンで、有給休暇をきちんと取っている人間がどれだけいるだろうか?確かに週休二日で休みは増えた。ハッピーマンデーも始まった。しかし、これらは「全員が一斉に取る休み」だ。旅館は満室になれば、それ以上客を入れられない。一方で平日は閑古鳥が鳴く。いきおい、土日祝日やゴールデンウィークは客を詰め込み(どこも一杯だから、劣悪なサービスでも客が付く)、平日の閑散期に備えることになる。北海道などはもっとひどい。道東の観光シーズンは夏の2か月だけ。この期間の土日にどれだけ詰め込めるかを自慢するわけだ。
 祝日を減らしてでも、有給を取れるような社会にすれば、好きなときに客は出かけるわけだから、混雑は平準化され、いきおいサービスの向上を競うことになるはずだ。
 有給休暇でなく祝日を増やしてきた日本の政策(おそらく工場経営者の都合だけを考えて取られた政策なのだろうが、労働コストが高くなったいま、多少休日に働いたくらいでは中国やアジアへの生産基盤の流出は止まらない)こそが、日本の観光サービスの発展を阻害し続け、これだけ魅力的な山河がありながら、国民こぞって海外旅行に脱出していく国にしてしまったのだと思っているのだが。