雑観練習帳

ニュースの現場で思うことつれづれ

「アジア冷戦史」読んだ

 「ところで、この本読みました?」雑談の折り、ライバル社の記者が話題を振ってきた。
 意外なのか当たり前なのかわからないが、若手から中堅にかけての新聞記者は、恐らくもっとも本を読まない人種である。忙しく、動き回り、心を落ち着ける余裕がない。記者クラブで本の(マンガじゃない)話をしたのは何年ぶりか。これが50代になって祟ってくるのかもしれないが。
 ともあれ、ライバル社への対抗意識もあり!?、積ん読だった本書「アジア冷戦史」(下斗米伸夫著、中公文庫)を熱っぽく寝込んだ週末で一気に読み終えた(というほど分厚くもないが)。

アジア冷戦史 (中公新書)

アジア冷戦史 (中公新書)


 本書の筆者は、ソ連・ロシア政治をかじった人間なら知らぬ者のない第一人者。日本の優秀な研究者の本の例に漏れず、本書も客観的、つまり淡々と書かれている。
 ならば退屈な本なのか?
 本書に他人の口を借りて(外交史の本だから、多くのソースはソ連・ロシアほかの外交官や政治家の回顧録である)書かれている「事実」で私は10回くらい「へぇー」の声を上げた。政治に関心のなかった人はもっと多いだろう。

 例えば
 1.核開発は数百万の餓死者を生む。北朝鮮は既知として、ソ連も、中国の餓死も、核開発との連関があった。
 2.朝鮮戦争後、北朝鮮と中国、ソ連はそれぞれ冷たい関係、「偽りの同盟」にすらなった。ソ連との関係はとりわけ遠く、ソ連はアメリカ経由で北朝鮮側の情報を教えてもらったことがある。
 3.現在のロシア外交はヨーロッパ一辺倒から脱し、東方重視路線である。
 4.グロムイコ外相佐藤栄作首相に、北方領土の2島返還を持ちかけたことがある。また中国は、ソ連に対する日本の4島返還要求を支持した(ことがある)
 5.ソ連・ロシアは東方と西方2方面を同時に敵に回すことを恐れ、それを回避する外交政策を常にとり続けている。(小生は、現在のウクライナ危機でロシア側が退潮すれば、従ってそれは必ず東方外交へ波及すると考えるのだが)
 などなど。ご存じだっただろうか。
 独裁体制だからといって、全てが指導者の意のままに決まるわけではない(決まる国もあるようだが、そうなっていることにも必ず経緯がある)のである。本書を読むと、閉鎖体制の典型のようなブレジネフ体制は、同じ社会主義の中国より、資本主義の西欧により接近しようとしてたという、常識のウソのようなこともあらためて示されてしまったりする。
 というわけで、エピソード満載の本書なのであるが、実は私は隠れた筆者の提起したテーゼを感じた一人なのだが。そういう人は他にはいないだろうかなぁ。
 メッセージは、スローガンに書くだけが能ではないなぁと思ったのですが。

P.S:早速さぼってしまいました…どうもここしばらくだるい日が続きます。